3月8日に行われるフラワーデモに対する異議の声明

3月8日に行われるフラワーデモに対する異議の声明

一般社団法人siente
メンバー 一同

私たちSiente(シエンテ)は、性をめぐる職業への差別・偏見・規制に反対し、その解消を目指す非営利型の一般社団法人(NGO)です。
3月8日20時から行われる予定のフラワーデモのスタンディングに対して異議を有する私たちは、ここに声明を発表します。

「性暴力の根絶」は私たちも願っており、「すべての性暴力被害者に対し連帯します」というメッセージにも同じ気持ちを持っています。しかし、具体的に考え始めると、「どこからどこまでが性暴力であり、被害なのか」という問題が残ります。
とりわけ、本人が被害を受けていると考えておらず、自らの選択により、お金を介した性的サービスの提供を行っている場合については、今回掲げられている「性的同意はお金で買えない」というメッセージは、本人の自己決定に対して、他者が本人の選択・行為を否定することになります。

ひいてはこのメッセージは、性の娯楽産業やサービス業という仕事に就く人たちに対し、その仕事や、さらには人間存在としての尊厳そのものを否定することにつながり、その人達の自尊心、職業的誇り、プロ意識を傷つける暴力的なものではないでしょうか。
そして、その人たちの職業に対する社会の偏見や差別を助長するものです。

このようなメッセージが、歌舞伎町という多様な生き方を選択した人たちが多くいる場所で掲げられることについて、私たちは憂慮しています。
歌舞伎町では多くの方たちが、性の娯楽産業やサービス業に就いています。

主催者が「性搾取」という用語に込めている意味についても疑問があります。

フラワーデモのホームページの、「【2023年国際女性デーに向けて】」というタイトルでアップされている記事では、

歌舞伎町のネオンの下で、多くの若い女性たちが、性搾取に巻き込まれる現実があります。

フラワーデモのホームページ【2023年国際女性デーに向けて】より

金銭では性的同意は買えません。性を買うのは権利ではありません。一方の性が一方の性を「買える」社会で、性平等は実現しません。性的同意を「買える」社会では、性暴力は「なかったこと」にされ続けるでしょう。

フラワーデモのホームページ【2023年国際女性デーに向けて】より

とありますが、国連関係諸機関での定義では、金銭のやりとりを伴うからといって「性搾取」に当たるとはなっていません。

 そもそも、現在の性的な娯楽産業や性的なサービス業は、日本国憲法のもとで職業選択の自由の保障が及ぶものです。フワラーデモは、憲法の人権保障規定を否定する立場に立つのでしょうか。

また、性的な娯楽産業や性的なサービス業に従事する人々が多く就業し、通行する歌舞伎町という場所で、『一方の性が一方の性を「買える」社会で、性平等は実現しない』という一方的な考え方によるデモを行うことは、性の娯楽産業やサービス業に就く方たちに対し、あたかも性の不平等に加担しているというメッセージを伝えてしまうのではないでしょうか。

真に問題にされるべきなのは、痴漢やレイプといった性暴力です。
しかし、性的な娯楽産業や性的サービス業に対し「金銭を介すことが悪である」とするメッセージは、これらの産業で働く人が性暴力に遭った際、被害を受けた当事者に「自分が悪いから被害に遭った」と自己否定意識を植え付ける危惧があります。

私たちは常に、限られた選択肢の中で最適解であると思ったものを自分で決定し選び生きています。人身取引に当たらない限り、性の娯楽産業やサービス業で働くことも、自らの意思で選んだことです。
選んだことに対しての評価は自らが自らに出すもので、他者の価値観により押し付けられるものではありません。
選択肢の幅の狭さは、広範な社会政策をとおして改善されるべきものです。

「性的同意はお金で買えない」というメッセージ、そして『一方の性が一方の性を「買える」社会で、性平等は実現しない』というメッセージについて、私たちは、以上のような理由から異議を有することをここに声明します。
なお、当法人の理事は全員が女性であることを末尾に付記しておきます。

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