Siente裁判傍聴記録「吉原刺殺事件」

この記事は、11/20〜22に行われ、11/28に判決結果が待たれる「吉原刺殺事件」の傍聴記録です。
なぜ明るい未来のある女性が、凄惨な事件に巻き込まれなければならなかったのか。どうすれば防げたのか、その疑問を解消すべく、セクシャルウェルネス産業を応援する団体として客観的に情報をまとめようとしましたが、他のメディアでは公判で語られたことと異なっている記事を見ましたので、それについて書いていきたいと思います。

その記事はこちらです。>>《吉原刺殺事件の初公判》「1回の映画では?」「13万円。そういうものだと思います」今井裕被告が語ったA子さん殺害の“身勝手すぎる理由”と“異様な金銭感覚”

こちらの記事では、見出しに<罵倒され、土下座させられ「殺害し、自殺しようという選択にした」>とあり、本文中でも<その後、今井被告はAさんに土下座させられたという>とありますが、これは「自ら土下座した」の誤りです。

被害者の人格を誤って伝えているため、Aさんがどのような対応を今井にしていたのかを、証言からまとめました。

●ポイント1「今井被告のプライドを本当に傷つけたたのか?」

Aさんを殺害した理由は、「自分のプライドが傷つけられたのも理由の1つ」と裁判では答えていますが、絞り出すように回答をした点が気になりました。

  • Amazonで自殺のためのナイフを買ったこと
  • DM予約で断られたこと
  • 自殺を思い立った経緯、自殺を実行した時の思いなどは明確に答えるものの、Aさんへの思いだけは理路整然とではなく、言葉を選ぶように答えた点

犯行前のAさんと今井被告との会話のやりとりが問題であるとされています。「キャンセルしているのによくきましたね」とAさんが言ったのは、今井被告のプライドを傷つけるためにいったものではなく、Aさんへの「怒り」です。

Aさんは今井被告が追い込まれる前、良好な関係を築いていました。
店外デートで映画館にも一緒に行き、変装し、アカウントを変えて予約をした今井被告に対してもサービスを提供しようとしていました。

しかも、今井被告の証言にはAさんが「キャンセルをしたことで、予約していたケーキが無駄になった」とあります。つまり、予約をしてくれたお客に対しては、サービス以外でもおもてなしをしようという思いが伝わります。

キャストとしてプロ意識の高い対応をしてきたAさんに対し、何度も予約キャンセルを繰り返す今井被告に腹が立ったと考えるのが自然ではないでしょうか。

また殺害された日も、変装をして来店した今井被告に対し、従業員を呼んで追い返すこともできたものの、従業員を呼ぶことなく今井被告の話を聞きました。
このような状態で、今井被告と話す中では「厳しい言葉」をかけるのは自然なことであり、プライドを傷つけてやろうという思いはないように感じました。

●ポイント2「Aさんは今井被告を土下座させたのか?」

Aさんが今井被告を土下座させようとしたとされるものがありますが、これは誤りです。
11月21日(火)の午前に行われた検察の質問では、「土下座は許してもらうために自らおこなった」との証言をしています。つまり、Aさんが土下座をさせたのではなく、今井被告自らがAさんに許してもらうために土下座をしたのです。
その後、Aさんは「キャンセルが多いので無理です」と笑って答え、これが結局プライドを傷つけたことにつながります。
しかし、この土下座に対して笑ったという部分についても、今井被告が予想外の行動をとったために思わず笑ってしまった、もしくは「そんな大げさな」と笑って答えたとも考えられるのではないかと思います(この辺りは、密室の出来事なので、想像になってしまいますが…)。

というのも、ポイント3ではAさんは最後までお客さんに対してきちんと接しようとしているからなのです。

●ポイント3 「Aさんは最後まで真摯に対応した」

殺害される前、今井被告がトイレに行き「このまま帰るか」「道連れにするか」を考えていたところ、Aさんはベッドで彼が戻るのを座って待っていました。
今井被告が戻った時に、ワイシャツを脱ごうとし、Aさんがワイシャツをクローゼットにしまおうとしていました。
このタイミングで今井被告はAさんの背後にまわり犯行に及んだわけです。
Aさんは自分が刺される瞬間まで、今井被告が命を奪おうとするとは思っておらず、他の客と同様のサービスを提供していた姿勢が伺えます。
しかも、今井被告自身も「サービスを受けられる」と思っていたので、シャツを脱いだわけです。
繰り返しになりますが、来店した段階で、今井被告を追い返すこともできたわけですが、それをすることもなく、Aさんは通常のサービスをしようとしていたのです。

以上の点から、Aさんが今井被告を追い込むようなことはなく、自殺願望のある客に巻き込まれたというのが事実だと感じました。

Aさんを巻き込んだ理由は「自分とは真逆でキラキラしていた」としか答えていません。
なぜ自殺前に良い思いをしようと思い、予約した女性を道連れにしようと思ったのかはまだ真相が分かりません。

本人は「恋愛感情はなかった」を否定していますが、執拗に会おうとしている点、映画デート、土下座をして「関係を修復したかった」と話していることを考慮しても、恋愛感情が少しはあったかと思います。
今井被告は裁判中、下を向き「とんでもないことをやらかしてしまった」といった表情は理解できるものの、Aさんに対する感情は分かりませんでした。

今回の件は、「吉原」という社会から見れば特殊な環境の場所で起きた事件から、被害者のAさんにも非があるという旨の報道が散見しますが、被害者Aさんには問題があったとは思えません。
3日目の検察側の論告求刑でも「被害者には落ち度がない」とはっきりと主張していました。
擬似恋愛をサービスとするため、そのように受け取られても仕方ない件を考慮しても、これ以上被害者を傷つけることがないよう、発信者も寄り沿うべきだと思います。

(取材・執筆:吉原錦三)

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