【まとめ記事】埼玉県営公園における撮影会中止についてのやりとり

埼玉県営公園における撮影会中止について、sienteで行なった問い合わせなどのまとめを記事にしました。

公益財団法人埼玉県公園緑地協会、日本共産党、日本共産党埼玉県議会議員団とのやり取り


まずは、公益財団法人埼玉県公園緑地協会、日本共産党、日本共産党埼玉県議会議員団に対して、それぞれメールや問い合わせを行いましたが、その経過についてまとめます。


■2023年6月8日にしたこと

sienteが、今回、いち早く問い合わせを行ったり、声明文を出したりしたのは、撮影会に関わっている方から
「本日突然、会場側からイベントを中止して欲しいと要請を受けて、24・25日の撮影会がなくなりそうである。すでに中止が決まったイベントもある。9日の午後に、24・25日の撮影会についてイベント主催者と会場側で協議があるようだ」
という相談が 6月8日に入ったことによります。

この「イベント開催直前に会場側からの突然の中止要請要請」という事態は、おかしなことだとまず疑問に感じました。
sienteは、セクシャルウェルネスの仕事に携わる人たちが、自由意志で選択をして、仕事をしたり表現活動を行ったりすることを応援する団体です。そこで、一体どうしてそんなことになってしまったのかを調べるとともに、そのおかしなことに対して速やかに対応すべきであると理事会で話し合って決めました。
そして、8日中に、抗議文等を作成し、9日の午前中から各所に問い合わせをしたり、文書を送付したりしました。


■2023年6月9日以降にしたことの概要

【公益財団法人埼玉県公園緑地協会とのやり取り】

sienteからは6月9日の午前に最初の問い合わせを入れ、同日の夕方、埼玉県緑地協会からお返事がありました。
それに対しての質問を、6月12日に入れたところ、13日に返答がありました。再度、16日に質問を行い、21日に返答がありました。
21日の返答をもって、こちらが聞きたいこと、お伝えしたいことは充分であると判断したため、終了としました。
計3往復のやり取りを行いました。

【日本共産党・日本共産党埼玉県議会議員団とのやり取り】

sienteからは6月9日に日本共産党本部と日本共産党埼玉県議会議員団に文書を送信したところ 、返答がありませんでした。そのため、6月27日に日本共産党埼玉県議会議員団あてに、埼玉県営公園での撮影会について、siente journal で記事を掲載するため、主に下記の質問をしたいという取材の申し込みをしました。

●日本共産党埼玉県議会議員団が考える性の商品化について教えてください。
●具体的にどのような写真が、わいせつなポーズやわいせつなしぐさであると判断されたのか教えてください。
●女性の人権を侵すようなこととは、どのようなことなのか教えてください。
●グラビアモデルやアイドルなどの仕事に女性が就くことに対しての考えをお聞かせください。

こちらの取材については、28日にお断りするという返答をお電話にていただきました。
お電話は2回いただき、1回目にお電話をいただいた際には、「取材という形ではなく、記事に掲載するかどうかは意見交換の上ですることはできないか。その話し合いの場を設けていただけないか」という 依頼をしました。しかし、意見交換の場も設けないというお返事でした。
私たちとしては色々とご意見を交換し、理解を深めたい気持ちもありましたので、とても残念です。いつか話し合いができる機会があることを願っています。
なお、共産党本部へは抗議文を送信した後、何の連絡もありません。 



公益財団法人埼玉県公園緑地協会への問い合わせとそのお返事

6月9日に問い合わせた内容は、「埼玉県営公園における撮影会中止に対する抗議の表明」に掲載していますが、概要は次のとおりです。

【sienteからの抗議と問い合わせと要望】

① 共産党埼玉県議会議員団の申し入れに対して、御協会内でどのような議論をした上で、憲法22条の職業選択の自由等に抵触する可能性のある中止の決定に至ったのかを開示してほしい。
② セクシー女優やグラビアモデル、アイドル等の職業に就く方たちは、その職業選択の自由と、自らの体を主体的に使った表現の自由と、それをやりがいとする個人の尊厳がある。職業選択の自由、表現の自由、個人の尊厳を傷つけたことに抗議する。 
③ ファンの方たちの休日の楽しみが奪われてしまったことにも、残念に思っている。
④ (申し入れの時点ではまだ中止が決まっていなかった)令和5年6月24日25日にはしらこばと水上公園で行われる予定の近代麻雀水着祭について、貸し出しを再検討してほしい。
⑤ 貸し出しを行わない決定が伝えられ中止となった撮影会については、主催者側と出演者に対して損害の補償をしてほしい。

これに対して、緑地協会の担当者からは下記のお返事がありました。

【緑地協会からの返答】

①に対して
24、25日の撮影に対して、過去開催された撮影会のSNSにアップされた写真や開催の告知について埼玉県民からの指摘があった。そのため、過去の撮影会の様子をインターネットで閲覧したところ、「18歳未満の女性を出演させていたことが確認できたこと」「成人女性であっても過激なポーズ、水着が見受けられ、撮影許可条件(「マイクロビキニに分類される水着及びそれと同等の露出となる水着は禁止」「水着をズラす、過度に股を広げるなどの過激とみなされるポーズは禁止」)を抵触する撮影行為が行われていた事実を確認したこと」によって中止を判断した。また、公序良俗という概念は幅広く理解も様々ではないかと考えられる一方で、県営施設を預かっていること、過去にも何度か水着撮影会についての苦情があったことから、男女共同参画計画の趣旨等を総合的に勘案して施設使用を許可できないと判断するに至った。

⑤に対して
イベントに対する損害賠償については主催者と協議する。

なお、メールの文末には、「日本共産党埼玉県議会議員団は県に申し入れを行ったことを申し添える」と記載されていました。

【やり取りの補足】

問い合わせを入れるまで、「テキスト埼玉県民からのクレームによって中止を決定した」という事実はわからず、6月8日に日本共産党埼玉県議会議員団 が申し入れたことだけが唯一の情報でした。
また、大野元裕埼玉県知事が「埼玉県、公園緑地協会として特定の政治団体等の意見に左右された事実はございません」とTwitterで発表したのは6月11日の時点です。そのため、6月9日の時点で、sienteが送った問い合わせや抗議文については、訂正をしないこととします。


なお、①の返答に対して、報道やツイッター上では、「過激なポーズやマイクロビキニに対するルールは去年12月、未成年についてのルールは今年6月にできた」という情報が流れていたため、後出しで、貸し出しを中止するのはおかしいと考え、さらに問い合わせを入れました。
どんな約束で貸し出しを決めて、それを一方的に中止するのは、理にかなっているのかがわかりませんでした。
また、過激なポーズやマイクロビキニというものが、具体的にどのような表現であるのかを教えて欲しいという点、違反があった撮影会についても「撮影会として過激化を推奨している状況なのか」という点を確認したくもありました。
「過激なポーズやマイクロビキニ」とありましたが、それが適切ではない表現規制に当たるのであれば、それは自由な表現活動を妨げるものだと考えました。

■6月12日の問い合わせ

【sienteからの問い合わせと要望】

 ①ツイッター上には過激なポーズやマイクロビキニに対する撮影許可条件のルールは今年12月、未成年についてのルールは今年6月にできたという情報が流れているが、こちらは正しい情報として受け取ってよいのか。
もし、異なるのであれば、過激なポーズやマイクロビキニについての規定、18歳未満のモデルの参加についての規定が、いつできたのか具体的に教えて欲しい。

②撮影会に対する貸し出しの契約はいつ結んだか。その契約の中で、①にあげた2つの規定が記されていて、合意があったのか。

③②にて、合意があったとして、撮影会側が、今回中止になった撮影会より前に合意について違反したことはあったのか。
(※大野知事のツイートでは、「川越水上公園では同様のルールがなかった」「しらこばと公園が中止要請をした3者のうち1者については、詳細許可条件提示後に開催されたイベントでの違反が確認されなかった」と発言がすでにされていたことからこの質問をしました)
対して、2つの撮影会にて、違反したことがあったと大野知事のツイートにあったが、過去の違反を知りながら、今回の貸し出しを行ったのはなぜか。
また、埼玉県公園緑地協会側の一方的な撤回は、契約上問題ないものなのか。

④貸し出し中止を判断するに至った、具体的に「過激なポーズと認めた写真」「マイクロビキニの衣装の写真」を教えて欲しい。こちらはネット上の写真等を判断材料としたという情報が出回っているため、具体的に教えて欲しい。

⑤撮影会中には、担当者がついていて、どのような運営になっているかチェックしていたのか。

という5点を問い合わせました。
同時に、下記の要望をしています。

①埼玉県知事のツイートには、「専門家を交えた検討を協会に依頼しました」とある。この検討会に、私たちの団体も入れていただきたい。実際に、今回中止になった撮影会でモデルをしていた人もメンバーにいる。自ら望んでグラビアモデルやセクシー女優という仕事を選んだ人が、どのような思いで撮影会に臨んでいるかという意見を取り入れた上で、ルールの策定をすることが必要なのではないか。

【緑地協会からの返答】(6月13日に返答がありました)

①過激なポーズやマイクロビキニについての規定は、2022年12月にしらこばと公園が定めている。(川越公園には類似の規定はない)
18歳未満のモデルの参加についての規定については、現状明記されていない。今後許可条件に明記していく。

②契約ではなく、「公園内行為許可」という行政処分として取り扱っている。許可日についてはイベントにより様々で、許可済みのものもあれば、申請書が未提出のものもある。
過激なポーズやマイクロビキニについての規定については、しらこばと公園の許可条件にあり、打合せの度に口頭で主催者に伝えていた。
一方、川越公園では、しらこばと公園のような詳細な許可条件はなかった。公序良俗に反する行為を生じさせないことなどを提示した書面に署名していただいている。

③水着撮影会は、これまで水着とプールのロケーションが合致すること、夏季プール以外の公園の利活用という使命を果たせること等から利用を許可してきた。
しかし、しらこばと公園で6月に撮影会を予定していた主催者3者のうち2者は、今年4、5月に開催した撮影会時に、2023年度に新たに詳細となった許可条件を守っていなかった。許可条件に違反する行為があったため不許可とした。(この2者に関しては一度許可したものを撤回したものではない)
川越公園で6月に撮影会を予定していた主催者3者については、川越公園が提示する許可条件の違反はなかった。

④具体的な写真については、著作権等の問題があるため、提供することは差し控えたい。

⑤これまでも公園管理事務所職員が適宜巡回していたが、規模の大きいイベントでは全ての違反行為を確認することは困難な状況である。今後は巡回頻度を増やすなど現場の監視体制の強化 を図るとともに、違反行為の有無の確認等を検討していく。

と、上記の返答をいただきました。
なお、こちらの要望「sienteを検討会に入れて欲しい」については、「ご意見をいただく専門家につきましては、今後埼玉県とも相談して検討して参ります」とのことで、明確なお返事をいただけませんでした。


【補足】

②③については、結局、公園の貸し出しの流れがよくわからない部分もあるのですが「水着撮影会」にこれまで貸し出しをしてきたにもかかわらず、一般人からのクレームに対し「公序良俗を盾に急に貸し出しを中止できるものなのか」ということを、これまでにきちんと議論されてこなかったことが、突然の中止という事態に結びついた理由になっていると感じました。
また、⑤の返答により、「撮影会全体が過激な方向へ向かっていた」のではないことがわかりました。グラビア撮影という仕事が気に入らない方もいるでしょうが、それで生計を立てる人もいれば、その表現をやりがいとしている人もいます。ルールを守って運営している人が、不当にイベントを中止されるようなことがあってはなりません。

さらに疑問や意見があったため、再度、メールを送りました。

■6月16日の問い合わせ

【sienteからの問い合わせと要望】

①「18歳未満のモデルの参加についての規定について」
・18歳未満のモデルの参加については、一律に、参加してはいけないとするのではなく、一定の条件を設け、その上で参加できる方向のルールで協議をお願いしたい。
・18歳未満のモデルの参加を、年齢で区切り、一律に禁止してしまうと、「アイドルとして活躍したい」などの夢を持つ18歳未満の人の夢を閉ざすことにつながりかねない。
・18歳未満の保護という部分で細やかに配慮していただく一方で、「もっと活躍したい」などの夢を持つ18歳未満の人の意思も尊重していただきたい。

②③の「公園の貸し出し」について
・申請書を出さないまま、予約(仮押さえ)ができ、その状態のまま撮影会のアナウンスができ、顧客の募集ができるということなのか? (許可してないにもかかわらず、施設を利用するという前提で、撮影会の企画をして顧客の募集をしていたというように読めるため)。そういうことであれば、公園の貸し出しの流れという業務の部分にも問題はなかったのか。その点の問題点と改善についても、教えていただきたい。
・許可条件の違反がなかったにもかかわらず、撮影会が中止になってしまった団体もあったとのことだった。最初の問い合わせの際にも補償についてお願いしているが、改めて、ご厚情のあるご対応をお願いしたい。

④具体的な写真については、著作権等の問題があるということだったが、「このURLのこの写真」という形で特定していただく分には、問題ないのではないか。そのような形で教えていただくことはできないか。

⑤巡回しているスタッフがいたということは、撮影会全体で過激化が進んでいたというよりは、一部で過激な衣装やポーズを行なっていたために、見逃していたということになる。
撮影会の中で全ての衣装やポーズを、巡回担当の職員の方や撮影会スタッフが、漏れ無く完璧にチェックするというよりは、モデルや参加者等も含め、どのような条件で撮影会に臨むと良いのか、全体でルールの共有ができる形で、今後検討をして欲しい。

上記の問い合わせとお願いをした上で、再度、sienteを検討会に加えて欲しいというお願いを入れ、メールを送信しました。

 

【緑地協会からの返答】(6月21日に返答がありました)

①18歳未満のモデルの方の参加につきましては、一律に禁止にできるものではないとの考え方も承知しているため、埼玉県の関連各所にも指導を仰ぎ、検討していく。

② ③撮影会の手続きは、希望される方が一同に会して開催日の抽選会を行っている(許可の条件や今後の流れを説明した上で抽選を実施)。抽選後は開催告知等が可能となっている。申請書については、出演者や参加者等の内容が確定後に提出するため、主催者によって提出時期が異なる。今後、申請から許可までの流れについても、埼玉県や関係者の皆様とも協議して、改善していく。
また、補償については主催者と協議していく。

④写真につきましては、具体的に写真をお示しすることで個人が特定されるため、プライバシー保護の点から情報提供を控えている。

また、今後のルール作りについては、埼玉県の関係各所等とも協議し、意見も募りながら進めていくとのことでした。

こちらのやり取りを最後に、再度の問い合わせはせずに、終了しました。
緑地協会のご担当者の方は、最後までとても真摯に対応くださいました。ありがとうございました。

<まとめ>

「水着の撮影会」を好まないという方もいると思います。
けれども、その仕事で生活をしている人もいて、またその表現活動をやりがいと感じ取り組んでいる人もいます。
ですから、排除をするのではなく、お互いが納得できるルールのもと、運営できるようであってほしいと考えています。
また、日本では公共の福祉に反しない限り自由な表現活動が認められています。撮影会イベントにおいて、監視体制を強化しすぎることは行政の過剰な介入を招き、表現者の委縮につながるため、そのあたりのバランスをとっていただけるとありがたいです。
様々な考えを持ち、様々な人生を送っている人がいるのが社会ですが、その社会の中で、セクシャルな表現をすることが不当に排除されるのはおかしなことです。
sienteは、今後も、セクシャルウェルネスに携わる方たちが、不当に制限を受けたり、排除されたりするようなことがあった際には、声を上げていきたいと考えています。

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